「栄川」の花見
ゴールデンウイークに福島の微温湯温泉へ来たら、道沿いに植わっている大山桜の並木が満開になった。
今日は暖かいから、花見をしようと思う。
帳場にいって、「栄川」のワンカップと麒麟ビールの缶、それに少しのつまみをもらい、小盆にのせて、良さそうな枝の下へしずしずと運んでゆく。
蕗の薹はもう背が高くなった。宿の庭のあちこちには、地面のちょうど蕗の薹くらいの高さに、カスミザクラの薄紫の花が咲いている。大山桜はソメイヨシノよりやや紅が濃く、赤みをおびた若葉と花がいちどきに出る。
草の上に寝転んで見ると、白い雲の流れる青空を背に、こまやかな花の枝が美しい。日はもう傾いて、輝やかな日が斜めに射している。
花盛りの桜の樹と一緒にいると、大勢の家族といるような気がする。この花がいちどきに散れば、それは寂しいことだと考えていると、風が出て来て、空が暗くなった。
『幻想秘湯巡り』復刊と集英社コラム連載のおしらせ
●この夏、電子書籍のレーベル「惑星と口笛ブックス」より、『幻想秘湯巡り』を復刊する。各地の温泉とその温泉ゆかりの文人について記したエッセイ集ぢゃ。中に短篇小説「洞窟の湯守」が入っている。「電子版あとがき」つき。
●集英社新書ウェブコラム「酒場から酒場へ」好評連載中。見てくだされ。
(=‘x‘=) 以上、南條城主から電子書籍刊行とコラム連載のおしらせでした。