「一房」のおろしそば

 昔、池袋西口の池袋警察のそばに「一房(ひとふさ)」という小さな蕎麦屋があった。今は知る人もあまりいないが、昔の食べ物案内書には載っていたから、それなりの由緒ある店だったのだろう。
 ここは米子特産の蕎麦粉を使って、「おろしそば」や「かやくそば」など、各地の田舎そばを食べさせた。壁に日本の「そば地図」が貼ってあり、地方の特色ある蕎麦の数々を紹介していた。
 わたしは二回ぐらい行って、「おろしそば」を食べたのを憶えている。
「鍋そば」というものがあり、うどんすきのようなものだったと思うが、佐藤春夫がそれを食べている写真が飾ってあった。

干柿

 年をとって好みが変わることは、よくある。
 子供の頃、干柿はあまり食べなかったが、四十を越した頃から妙に好きになった。以前、冬に田中温泉へ行くと、時々近所の人がこしらえた干柿をどっさりもらって、堪能した。

「龍口酒家」の石橋さんも干柿を作るのが上手である。

赤ホヤと莫来

 昔、M氏とN君と北海道へ行った時、小樽の寿司屋で初めて赤ホヤを食べた。ケムール人のような姿のホヤだと思った。普通のホヤとは味がかなり違うが、これはこれで良い。
 「莫来」はこの赤ホヤとコノワタを合わせたものだが、こちらも美味い。