南蝶食単 まえがき

 人も知る袁枚の『随園食単』は味の書である。味覚を論じ、調理法を記す。交友のことなども少し書いてある。わが「食単」は印象の備忘録である。その時々心に残った食べ物を記すばかりで、無論美味かったものが多いが、ありきたりなものであっても、つまらなくても、ただ思い返して懐かしくさえあれば記す。
 また近頃食べたものもいずれは思い出となるのだから、これも忘れないうちに記録する。読者よ、お読みとあらば、かかるものとして読みたまえ。