四季桜

 昔、綜合社でアルバイトをしていた時、社員のK山さんが「四季桜」を飲む会に連れて行ってくれた。
 会場は神田の「龍水楼」で、羊のしゃぶしゃぶを食べながら、小さい樽に入っている酒を試飲したのだが、酒は活きが良くて旨く、したたかに酔った。帰りに地下鉄に乗り、気がついたらどこか遠い終点の駅にいた。
 私は会へ行く前に和泉屋で買ったベルギー・ビールをホームで開けて、ラッパ飲みしてから、乗り換えて、何とか家に辿り着いた。

ソーホーの鮑

 昔、初めてロンドンへ行った時、店の名は忘れたが、一人でソーホーの広東料理屋に入った。旅行案内書に載っている高級店だった。
 広い店内に客はわたしと、遠くの隅にもう一人、イギリス人とおぼしき髭の紳士がいるだけだった。
 わたしは家鴨の冷製とアワビを塩味で煮たのを注文した。いずれも非常に薄味で驚いたが、のちに香港へ行った時、同じような薄味だと思った。

カノカ汁

  

 ブナカノカは橅の木に生える白い茸である。秋になると鳴子のあたりではモダツと共によく食べたが、数年前、食中毒事件があって、最近店屋などでは出さない。
 彼岸の頃。東鳴子のツンちゃんの家で、このカノカの汁を御馳走になった。カノカと茗荷と豆腐と油揚が入っていた。

サワモダツ

  モダツという茸には、オカモダツとサワモダツがあるそうな。
       サワモダツは沢の倒木などに生え、オカモダツより美味いという。
       今朝、旅館で味噌汁の具にしたのを食べたが、今年は不作のようである。

南蝶食単 まえがき

 人も知る袁枚の『随園食単』は味の書である。味覚を論じ、調理法を記す。交友のことなども少し書いてある。わが「食単」は印象の備忘録である。その時々心に残った食べ物を記すばかりで、無論美味かったものが多いが、ありきたりなものであっても、つまらなくても、ただ思い返して懐かしくさえあれば記す。
 また近頃食べたものもいずれは思い出となるのだから、これも忘れないうちに記録する。読者よ、お読みとあらば、かかるものとして読みたまえ。

御挨拶&プロフィル

旧ブログから引っ越してまいりました。最初のご挨拶を再掲いたします。
今年からはこちらでどうぞよろしくお願いいたします。

 

≪御挨拶≫
インターネットを使って本の宣伝をしたいと思っていたが、機械を巧くいじれぬ吾輩にはユメのユメであった。このたび、小三毛さんという奇特な協力者を得て、おんぶにだっこでブログを開設する。吾輩の小説(老舎のでないヨ)「猫城」にちなみ、「猫城通信」と名づける。閑な人よ、御覧あれ。 城主敬白。

 

・城主プロフィル・
南條竹則。1958年生まれ。貧書生なり。中華料理と怪奇小説を愛す。
「人生はうしろ向きに」が座右の銘なり。

 

・小三毛・
猫城に棲息中の人外。お留守番役&化猫修行中。
主な活動時間は日が沈んでから夜があけるまで。
図書室と寝室がお気に入り。